書評

好きすぎるオメガバース設定-私の場合-

BL好きを己に解禁してから、出会ったオメガバース設定の好きなマンガについて語りました。

オメガバース設定については、それぞれの試し読みで読める範囲に説明があります。ちょっとずつ設定が違うので読み比べても面白いですよ。

嫌いでいさせて/ひじき
オメガバース設定を知ってから出会った中で、唯一、今を生きている私たちと地続きにある世界に思えた作品です。オメガバース設定に隠れて見失いがちですが、本来、大切な人を大切にするって、こういうことだよなぁって自分ごととして、種をひとつまかれたような気分になりました。

この作品の人気を決定づけたのは、アルファなのにアルファであることと戦っている葉月くんの姿、なんじゃないだろうかと思うのです。自分の努力ではどうにもならない部分で苦しむ人=オメガを、人として大切にする姿は、他の作品にはあまりない世界観に思いました。

作者ひじきさんの想いは、2巻の「好きなオメガを幸せにするのがアルファの義務だよ」というセリフに表れている気がします。

地続きを裏付けるポイントのひとつに、女性の存在があります。雫斗さんの母親、アルファ性、オメガ性の女性。メインで活躍するわけではありませんが、当たり前のように、さらっと出てくるんですよね。これはひじきさん、勇気いったんじゃないかなぁ。

BL作品の中には、不自然なほど女性が描かれないものも多く、でもそれは世界観的に当たり前になっているし、私自身、作品を読んでいる最中に違和感を感じることはありません。感じることはありませんが、ゆえに、「読む」という「消費」行動でしかない気がします。そこにあるのは一種の快楽だけで、ときめくような共感とか感動とかは生まれません。

小さな違和感をあげるとしたら、クズに描かれるアルファさんたちの立居振る舞いかなぁ。いや、アルファさん優秀で、頭いいんでしょ?なんか頭悪そうに見えますけど?みたいな…。

現在、3巻まで発売されています。(今も連載中なのかしら…?)
ひじきさんのTwitterでは、ちょこちょこ『嫌いでいさせて』の裏話というか、プチエピソードが語られているので、ずーっと作品を楽しめるのが、面白いです。ひじきさんがどれほどこの作品を愛しているのかを感じます。

狂い鳴くのは僕の番/楔ケリ
狂い鳴くのは僕の番 【完結】
狂い鳴くのは僕の番 ;β 1//【完結】
狂い鳴くのは僕の番 :Re [連載中]

人生ではじめて読んだ、オメガバース設定。「番」を「つがい」ではなく「ばん」と読んでいたくらい何も知らなかったです。

Kindle Unlimitedで、当時5話くらいまで単話版が読めたのですが、最後の烏丸さんのセリフがキラーワードすぎて、その5話で買うのを即決しました。単話版は購入しないと決めているので、私はまだ読めていませんが、今もシリーズとして連載が続いています。

この作品の中で一番好きなのは、うなじを噛むことを大切に描いていること。他の作品だと、小さなコマでさらっと終わってたりして驚きますが、いやいや、超重要じゃん!って思っています。

オメガバース設定の中では、不幸系ともいうのか…差別の様はしんどい系ですが、それでも、オメガさんが、サラリーマンとして働いているという設定はめずらしいのではないかと思います。ネタバレしたくないのでどう書いていいのか悩みますが、そういうことがあっても不思議はないな、と思う悲しいことが、続刊のシリーズの中に描かれていて、共感しました。いかんせん、自分がそういう立場だったもので…。

楔さんの作品は、これ以降、パパセクスキャラメリゼも、メメントスカーレットも、グッバイ・ハーレキンも、読んでいますが、結局これが一番好きです。

リバース/麻生ミツ晃
オメガバース設定を紹介するのに、これは外せないかな…って思っている作品です。

オメガバース設定が生まれた背景を、私は知らないけれど、「今」を生きる私たちから見たときにはらむいくつもの矛盾について、正面から疑問を投げかけつつ、作者の麻生さんなりの答えを提示してくださったような気がします。

そもそものオメガバース設定を説明するときの、バース性の割合の図とか、アルファにはアルファの苦悩もあるっていう。「番」のために休暇をとる幸村さんを揶揄する上司たちは、現代の、育児休暇をとろうとする男性へのそれときっと同じだ。

池上彰さんの番組で、ヨーロッパでは子どもを育てるのは社会、日本では個人、と紹介されていた。はるか昔の日本では村で育てていた印象もあるけれど、現代はそうじゃない。私は結局、子どもをもつことはできなかったゆえに、なにをどう、手助けできるのかもわからない。地域のコミュニティに参加する手段もない気になる。言い古された「子はかすがい」を、感じない日がないくらい。ないものにばかり目がいってしまう。

村山由佳さんの『翼』の購入特典でいただいたカードに書かれていた「自分以外にはなれない」というメッセージをふと思い出した。

円の、本来の自分で生きられるようになってからの軽やかな変化は、それを物語っている。モノクロの漫画なんだけど、最後の数ページの、円の視界にはなんだか色が見えるような気がする、気のせいだけど。円の最新作のタイトルが投げかけた問いの世界を、私は今生きているんだよなぁ…。

今日のまとめ

こうして改めて、好きポイントを書き出してみると、私の場合、オメガバース設定だから好き…ってわけじゃないんだなってことを再確認しました。では何が好きって言われると…矛盾なく、美しく展開していく物語であること、でしょうかねぇ。

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